つながりを深め森の記憶を未来へ

那須平成の森は、開園から10年を迎えた節目に、これまでの歩みを振り返りつつ、未来への新たな一歩を踏み出しました。その中心にあるのが、令和5年度に策定された「那須平成の森 樹林地管理計画」です。この計画は、森の価値を高め、持続可能な形で管理していくための具体的な方針を示したものです。基本理念である「訪れる度に新たな発見!学び、楽しみ、守りつなげる、那須平成の森」を軸に、「森を能動的に管理し、より多様な利用ができる森とする」ことを目指し、森を多くの人々がそれぞれの立場や役割を持ちながら、共通の目標に向かって一緒に管理し、多様な利用ができる環境を目指す取り組みがスタートしました。「能動的」に管理するという言葉の裏には、森を守り育てるために、誰もが「自分事」として関わり、協力し合うという理念が込められています。それは、森が持つ豊かな自然や特別な雰囲気を次世代につなげるための、みんなで進める共同作業なのです。

また、この取り組みを通じて、地域事業者、自治体、訪れる人々など、関係者同士がつながりを深め、新たな協力関係を築いていくことも重要な目標の一つです。那須平成の森は、こうしたつながりを生み出し、それを大切に育むことで、森の未来を共に支える「人と人との絆」を広げいくものとなっています。
そうしたことから、那須平成の森では、今後、「つなぐ森づくり」「つなぐ人づくり」というビジョンを掲げて、取り組みを進めていくこととしているとのこと。

現在、那須平成の森では、この管理計画に基づき、フィールドの整備や新しいプログラムの試行が進められています。これらの活動は、自然環境の保全と活用の両立を目指し、森が持つ特別な雰囲気や価値を守りながら、多くの人々がその魅力を体感できる場を提供することとなるでしょう。

自然と人との歴史が記憶として残される森

那須平成の森は、人と自然が共存して育ってきた森であり、その歴史を未来にも伝えたいという考えもこの樹林地管理計画の根底にあるようです。昔はこの場所で炭焼きが行われていた歴史が植生からも読み取れ、また馬が放牧されていたことが、那須エリアの大切な自然資源であるツツジの生育に寄与しているのだそうです。こうした過去の営みが、今も森の自然の一つ一つに、記憶として痕跡が残されていることを那須平成の森のインタープリターから教えてもらいました。これらの歴史を知ることで、人々は森との深いつながりを感じることができるでしょう。

ツツジの育つ明るい森づくり:親子で学ぶ環境保全

那須平成の森で展開された具体的な取り組みの一つが、「ツツジの育つ明るい森づくり」です。このプロジェクトは、BOTANIST財団の助成を受けたNPO法人那須高原自然学校が実施主体となり、コンテンツの造成に栃木アウトドア事業振興会BERGTOADが協力して2024年11月10日に開催されました。活動の内容は、かつては、馬が放牧されていたことで、ツツジが育つ明るい森として維持されていた環境が、その後、放置され、徐々に暗い森になり始めていた森の一角について、まず、手を入れる前の状況を把握するための毎木調査を実施し、その上で、今後のツツジの生育を考えて、どの樹木を剪定するかを考えての間伐作業を通じて、ツツジが育つための明るい森の環境を整備するものでした。また、間伐した材を活用したカトラリー作りの体験も行われ、参加者は自然を守るだけでなく、資源を有効活用する意義についても学ぶ内容となりました。

このプログラムの特徴は、親子で参加するという点です。親から子へと自然の大切さを伝えることを目的に、家庭内で自然環境への関心が共通言語となることをねらいとしたそうです。この活動を通じて、那須平成の森が目指す「つなぐ森づくり」「つなぐ人づくり」の理念が、親子の絆を深める形で実現されているのです。また、こうした親子間のつながりが、地域全体での地域資源の保全や自然保全意識の向上にもつながることが期待されます。

シカの食害から樹木を守る:企業と連携した環境保全

もう一つ行われた取り組みが、「シカの食害から樹木を守る」プログラムです。近年、那須平成の森ではシカによる樹皮剥ぎが顕著になり、森の生態系に深刻な影響を及ぼし始めています。この問題に対処するため、JR東日本のワーケーション研修およびCSR活動の一環として、2024年9月30日と10月21日にこのプログラムが実施されました。

活動内容は、樹木を保護するためのネット設置作業です。さらに、那須平成の森のインタープリターによるレクチャーやガイドウォークも行われ、参加者は作業の意義や森の現状について深く理解する機会となりました。このプログラムには、日本森林技術協会(JAFTA)も協力し、エリアの選定や設置方法について助言が行われ活動の意義も達成されているようです。

この活動の成果として、樹皮剥ぎの未然防止に役立っているほか、JR東日本関連企業からの新たなプログラム実施オファーも寄せられるなど、さらなる展開にも広がり、こうした形でも、保全とか通用の好循環が始まっています。このような企業や団体との連携を通じて、森を守るための協力の輪がさらに広がり、関係者同士のつながりが深まることが、この森の価値をさらに高めています。

森の未来を紡ぐために

那須平成の森は今後も、「つなぐ森づくり」「つなぐ人づくり」というビジョン、並びに、樹林地管理計画の基本方針に基づき、豊かで多様な自然を守りながら、地域や関係者と連携して持続可能な形で活動を続けていきます。この森が持つ特別な雰囲気や静けさを大切にしつつ、企業のCSR活動や研修、個人ボランティアなど、多様な層が自然環境の保全に関わる機会を提供していくこととなるでしょう。

特に、「自然環境に対して何かしたいが、どこでどうすればいいのかわからない」という人々にとって、那須平成の森はその受け皿となることを目指しています。森の活動に興味を持つ方は、ぜひこうした取り組みについて、那須平成の森に相談してみてはいかがでしょうか。那須平成の森はこうした活動を通じて生まれる関係者同士のつながりを大切に育み、共に未来をつくり上げる場としての役割を果たしていくことでしょう。
「この森を訪れるすべての人が、新たな発見と学びを得られる場であり続けたい」那須平成の森からのメッセージは明確です。

自然を愛するすべての人々が、この森で共に未来をつくる、そんな場所になることを那須平成の森に期待したいと思います。

那須平成の森フィールドセンター
(9:00~17:00)
TEL/0287-74-6808 
栃木県那須郡那須町高久丙3254