

那須平成の森は、日光国立公園の施設として、インタープリターによる自然とのふれあいを中心に、自然保護と地域の魅力を発信し続けてきました。そんな中、新たなパートナーとして迎えたのが、株式会社National Park Solutions(以下、NPS)です。アメリカ発祥のブランド“PARKS PROJECT”を展開するNPSは、国立公園をテーマにしたアパレルやグッズの販売を通じて、国立公園のブランディングと自然保護活動を支援する企業。その活動理念が那須平成の森のビジョンと深く共鳴し、新たな取り組みがスタートしました。本記事では、このコラボレーションの背景から具体的な活動内容、そして未来への展望までを詳しくお伝えします。
NPSが展開する”PARKS PROJECT”は、アメリカの国立公園において、国立公園をイメージしたデザインのアパレルやグッズを提供し、その売り上げを自然保護活動に役立てています。この取り組みは、単なる物販にとどまらず、次世代へ自然保護の大切さを伝える役割も果たしています。そうした中、日本においても、活動がはじまり、環境省のオフィシャルパートナーとして登録されるなど、自然保護における新しい形を模索しています。
那須平成の森は、訪れる人々に自然の美しさや大切さを伝え、持続可能な社会の実現を目指しています。そのため、若い世代を含む幅広い層に「国立公園」や「自然」、「自然保護」を身近に感じてもらうことが重要なテーマです。NPSの「デザインを通じて自然保護を訴求する」というアプローチは、まさに那須平成の森の理念と親和性が高く、このパートナーシップが実現しました。
2024年4月13日、那須平成の森フィールドセンター内に、NPSの日本第一号として「Parks store」が開設されました。このスペースでは、NPSが手がけたオリジナルデザインのアパレルやグッズが展示・販売されています。特に注目を集めているのが、那須をテーマにしたTシャツです。このデザインには、那須平成の森のスタッフへのヒアリングを基にしたコンセプトが反映されており、那須駒の放牧と、それにより残され、那須の大切な自然景観となったツツジ群落など、地域の個性や、ストーリーが色濃く表現されています。
「Parks store」の設置は、来園者に新たな楽しみを提供するだけでなく、施設の滞在時間を増やす効果もありました。デザイン性の高さから、商品を手に取る来園者が多く見受けられ、その中にはNPSのファン層も含まれていました。また、売り上げの一部が那須平成の森のフィールドの保全やインタープリターの活動資金として活用される仕組みは、自然の保全と活用の好循環の新しい形として注目されています。
また、もうひとつの狙いとしては、このデザインTシャツなどを、帰ってから都会で着ていただくことで、国立公園や那須のイメージ訴求、誘客に一役買ってもらうことも期待されているのです。
NPSとのコラボレーションは物販だけにとどまりません。2024年7月6日には、那須平成の森でボランティア活動が行われました。この活動には、NPSの関係者をはじめ、関係の深いアパレルブランドやアウトドアギアメーカーなどが参加しました。具体的には、園内の登山道の整備や八幡つつじ園地における外来種「オオハンゴンソウ」の駆除が実施されました。
これらの活動は、単なる労働ではなく、参加者が自然と向き合い、その重要性を再認識する機会となりました。那須平成の森では、近自然工法(地形にあわせて、倒木などを活用し、自然へのインパクトを可能な限り小さくした持続可能な形で整備する方法)を用いた登山道整備が行われており、自然の力を活かしながら環境を整える取り組みが進められています。このような活動を通じて、参加者は自然保護の現場に貢献するとともに、地域のファンにもなっていただけ、自然と経済の両面で持続可能な未来への一歩を踏み出す契機となったのです。
NPSは、那須平成の森とのパートナーシップをきっかけに、2024年10月24日には、那須町とも「国立公園の環境保全と活性化に関する連携協定」を結び、那須平成の森との取り組みもパワーアップして継続していく予定です。「Parks store」も引き続き設置され、商品のラインナップ拡充も検討されています。また、保全活動についても、2025年7月5日に再び実施される計画が進行中です。
そこで、特に注目したいのは、ボランティア活動への若い世代の参加呼びかけです。現在はNPSの関係者を中心に活動が行われていますが、今後は地元住民をはじめ、NPSのアパレルの強みを活かした10~30代の若者にも広く参加を募ることを考えています。那須平成の森は、自然を感じ、触れ合う場として、若い世代にとっての新しい体験を提供することを目指しています。
また、那須町観光協会の協力もあり、地域の宿泊施設や観光施設などとの取り組みも調整中で、今後は、地域の施設でNPSのアパレルやグッズを購入しても、その一部が、那須平成の森の保全と活用のための活動資金として活かされる、町ぐるみでの仕組みの構築も期待されています。
さらに、こうした取り組みが、那須平成の森の保全と活用の好循環や共創体制のモデルケースとして、全国の国立公園をはじめ、他の地域や団体にも参考となる事例となるべく、更なる磨き上げを図っていく考えです。
那須平成の森とNPSのコラボレーションは、自然保護の新しい形を模索する挑戦です。デザインを通じて国立公園をはじめ自然の魅力を伝える「Parks store」と、現場での活動を通じて自然保護に貢献する保全活動。この2つの柱を中心としたNPSの事例は、那須平成の森の共創による未来への道を切り開く理念を、とても良く体現しているといえるでしょう。
この取り組みは、自然保護を単なる義務ではなく、楽しさや美しさを伴うものとして捉え直す機会を提供しています。そして、若い世代を含む多くの人々が自然と触れ合い、その大切さを実感する場を作り出していくのではないでしょうか。
これからも那須平成の森は、多様な者とのパートナーシップを通じて新しい価値を創造し続けていくでしょう。自然と人とのつながりを深めるこの挑戦に、ぜひ注目していただきたいと思います。
那須平成の森フィールドセンター
(9:00~17:00)
TEL/0287-74-6808
栃木県那須郡那須町高久丙3254